障害福祉事業を始めたいと思ったら最初に考える10のこと
障害福祉事業を始めたいと思ったら最初に考える10のこと
「障害福祉事業を始めたい」と考え始めたものの、
- 何から始めればいいのか分からない
- 事業所の種類は決めたけれど、それ以外はまだ決まっていない
- どれくらいお金が必要なのか分からない
- 物件を探した方がいいのか分からない
- 職員をいつから集めればいいのか分からない
- 指定申請はいつすればいいのか分からない
このように感じている方は少なくありません。
実は、障害福祉事業の開業準備では、いきなり物件を探したり、指定申請の書類を集めたりすることが最初ではありません。
まず「どのような事業所を作りたいのか」「その事業を継続できるのか」を整理することが重要です。
この記事では、障害福祉事業の開業を考え始めた方が、最初に整理しておきたい10項目を分かりやすく解説します。
この記事のポイント
- 障害福祉事業は「やりたい」だけでなく「続けられるか」まで考える
- 物件を決める前に、事業計画を整理する
- 開業資金だけでなく、開業後の運転資金まで考える
- 人員配置は開業直前ではなく、早い段階から考える
- 指定申請はゴールではなく、開業後の運営まで見据えて準備する
1.まず「なぜこの事業を始めたいのか」を整理する
最初に考えてほしいのが、「なぜ障害福祉事業を始めたいのか」ということです。
例えば、
- 自分自身の経験を福祉に生かしたい
- 障害のある方を支援する仕事をしたい
- 現在の事業との相乗効果を作りたい
- 地域に必要なサービスを提供したい

- 新しい事業の柱を作りたい
など、理由はさまざまです。
ここを最初に整理する理由は、単に「理念を作るため」ではありません。
どのような利用者を対象に、どのようなサービスを提供し、どのような職員を配置し、どの程度の規模で事業を行うのかを決める土台になるからです。
「とにかくB型をやりたい」「放課後等デイサービスを始めたい」だけでは、まだ事業計画としてはスタート地点です。
2.「誰を支援する事業所なのか」を考える
次に考えるのは、利用者です。
同じ障害福祉事業でも、地域や対象者によって必要とされるサービスは変わります。
例えば、
- どのような年齢層を対象にするのか
- どのような障害特性の方を想定するのか
- どの地域から利用してもらうのか
- どのような支援を提供するのか
- 利用者はどのように事業所を知るのか
を考えてみます。
ここで大切なのは、「利用者は開業すれば自然に集まる」と考えないことです。
開業前から、利用者がどこから来るのかを考えておく必要があります。
3.定員をどうするか考える
次は事業所の規模です。
例えば就労継続支援B型を検討している場合でも、定員をどの程度にするのかによって、必要な職員数、物件、売上、人件費などが変わってきます。
「大きい事業所にした方が売上が増える」と単純に考えることはできません。
定員を増やせば、その分だけ必要となる人員や設備、運営負担も変わります。
そのため、
「何人入れるか」ではなく「何人なら無理なく運営できるか」
という視点が重要です。
4.開業する地域を考える
事業所をどこに作るのかも、早い段階で考えます。
例えば愛知県内で開業する場合でも、名古屋市とそれ以外の地域では、確認すべき行政手続や地域事情が異なる場合があります。
また、単純に「家賃が安い場所」を選べばよいわけでもありません。
考えるべきなのは、
- 利用者が通いやすいか
- 公共交通機関からアクセスしやすいか

- 送迎が必要なのか
- 周辺に競合事業所がどの程度あるか
- 必要な人材を採用できる地域なのか
- 家賃が事業収支に見合っているか
などです。
つまり、「空いている物件があるから、そこで開業する」ではなく、「この地域でこの事業を行う」という順番で考えることが重要です。
5.物件は「契約する前」に確認する
障害福祉事業の開業準備で特に注意したいのが物件です。
「広くて家賃も安いから、ここにしよう」と決めてしまう前に、確認しておきたいことがあります。
- 建物の用途
- 必要な面積
- 間取り
- 必要な設備
- 消防関係
- 建築関係
- 指定基準との適合
などです。
物件を契約した後に「この建物では予定している事業が難しい」と分かると、開業計画そのものを見直さなければならない可能性があります。
物件探しは重要ですが、物件契約を急がないことも重要です。
6.開業資金を考える
次に、どの程度の資金が必要なのかを考えます。
開業資金として考えられるものには、
- 法人設立関係費用
- 物件取得費
- 内装・改修費
- 設備・備品費
- 車両費
- 求人費
- 広告宣伝費
- 専門家への報酬
などがあります。
しかし、ここで忘れてはいけないのが運転資金です。
開業したからといって、最初から安定した利用者数を確保できるとは限りません。
そのため、開業時に必要な費用だけではなく、開業後しばらく事業を継続するためのお金も準備しておく必要があります。
7.「売上」ではなく「利益」まで考える
障害福祉事業を始めるとき、「月にどれくらい売上があるのか」を考える人は多いでしょう。
しかし、本当に重要なのは売上だけではありません。
売上から人件費、家賃、光熱費、車両費、その他の経費を差し引いた後に、どれだけ残るのかを考える必要があります。
例えば、
| 項目 | 考える内容 |
|---|---|
| 定員 | 何人の事業所にするか |
| 稼働率 | 実際にどの程度利用されるか |
| 報酬 | 基本報酬・加算等 |
| 人件費 | 職員を何人配置するか |
| 家賃 | 物件にいくらかけるか |
| その他経費 | 車両・光熱費・通信費等 |
こうした数字を開業前に一度シミュレーションしておくことが大切です。
8.必要な人員を考える
障害福祉事業では、事業所の種類ごとに必要となる人員基準があります。
そのため、「人が集まったら開業する」のではなく、最初から必要な人員を想定しておくことが重要です。
また、単純に基準を満たせばよいというわけではありません。
実際に事業を運営するためには、
- 管理者
- サービス管理責任者等
- 生活支援員等
- 職業指導員等
- 児童指導員等
など、事業種別に応じた人員を確保する必要があります。
特に、採用が難しい職種については、開業直前から探すのではなく、早い段階から採用計画を考えておくことが大切です。
9.指定申請を「最後の作業」と考えない
障害福祉事業を始めるには、指定権者から指定を受ける必要があります。
そのため、指定申請は開業準備の重要なポイントです。
ただし、指定申請は「最後に書類を出せば終わり」というものではありません。
指定を受けるためには、事業所の設備、人員、運営体制などについて基準を満たす必要があります。
つまり、
事業計画 → 物件 → 人員 → 設備 → 運営体制 → 指定申請
というように、最初から全体をつなげて考えることが重要です。
10.「開業できるか」だけでなく「続けられるか」を考える
最後に、最も重要なポイントです。
障害福祉事業では、指定を受けて開業することがゴールではありません。
開業後には、利用者へのサービス提供、職員の管理、記録、請求、加算、運営指導、指定更新など、継続して対応していかなければならないことがあります。
そのため、開業前から、
「指定を取れるか」
だけではなく、
「指定を取った後、安定して運営できるか」
まで考えることが重要です。
開業前に一度、この10項目を整理してみましょう
| No. | 確認すること | 現時点の状況 |
|---|---|---|
| 1 | なぜこの事業を始めるのか | □決まっている □検討中 |
| 2 | どのような利用者を対象にするか | □決まっている □検討中 |
| 3 | 定員をどうするか | □決まっている □検討中 |
| 4 | どの地域で開業するか | □決まっている □検討中 |
| 5 | どのような物件が必要か | □決まっている □検討中 |
| 6 | 開業資金をいくら用意できるか | □決まっている □検討中 |
| 7 | 事業として利益が出るか | □確認済 □未確認 |
| 8 | 必要な人員を確保できるか | □見込みあり □未定 |
| 9 | 指定申請の条件を満たせるか | □確認済 □未確認 |
| 10 | 開業後も継続できる計画になっているか | □確認済 □未確認 |
まとめ|「やりたい」から「開業できる」へ
障害福祉事業を始めようとすると、最初から「指定申請の書類」や「必要な設備」を調べたくなるかもしれません。
しかし、本当に最初に考えたいのは、もっと手前にある問題です。
「どんな事業所を作りたいのか」
「誰を支援したいのか」
「どの地域で行うのか」
「いくら必要なのか」
「事業として継続できるのか」
この部分を整理してから、物件、人員、指定申請へ進んだ方が、開業準備全体を組み立てやすくなります。
特に注意したいのが、物件を先に契約してしまうことです。
障害福祉事業では、建物や設備が指定基準等との関係で問題になる場合があります。そのため、物件を決める前に、事業計画と必要な条件を整理しておくことが重要です。
「事業所の種類は決めた。でも、その他はまだ何も決まっていない」という段階でも、決して遅くありません。
むしろ、この段階だからこそ、事業計画を一つずつ整理することができます。
次の記事では「その事業、本当に自分にできる?」を考えます
次回は、障害福祉事業の開業を考えている方に向けて、
「その事業は、自分が本当に運営できる事業なのか?」
という視点から、開業前に確認したいポイントを整理します。
「やりたい」という気持ちだけで開業を決めるのではなく、自分の経験・資金・人材・地域・事業計画から、現実的に開業できるかを考えるための記事です。
開業を具体的に考え始めた方は、ぜひ今後の記事も参考にしてください。
