「障害福祉事業 開業準備シリーズ その事業は自分にできる?障害福祉事業の開業前チェック
その事業は自分にできる?障害福祉事業の開業前チェック
「障害福祉事業を始めたい」
そう思って、いろいろ調べ始めたものの、次のような不安を感じていませんか?
- 自分に障害福祉事業の経営ができるのだろうか
- 福祉の経験があまりないけれど大丈夫だろうか
- スタッフを集められるだろうか
- 開業資金を準備できるだろうか
- 利用者が本当に集まるのだろうか
- 物件を借りても指定が取れなかったらどうしよう
- 開業した後に赤字にならないだろうか
障害福祉事業は、思いつきだけで始められる事業ではありません。
指定基準、職員配置、設備、人員、報酬、利用者確保、資金繰りなど、開業前に確認しておかなければならないことが数多くあります。
しかし、すべてを最初から完璧に決める必要はありません。
重要なのは、「自分は何ができて、何が不足しているのか」を開業前に把握することです。
この記事では、障害福祉事業の開業を考えている方が、自分自身の準備状況を確認できるように、6つの視点から開業前チェックを行います。
この記事のポイント
- 障害福祉事業は「やりたい」だけでは始められない
- 経営者自身がすべての専門業務をできる必要はない
- 不足している部分は、人材・専門家・外部サービスで補える
- 重要なのは「不足していること」より「不足を把握していること」
- 物件・資金・人材を先に決めてしまう前に全体像を確認する
- 開業できるかだけでなく「続けられるか」まで考える
第1章 まず確認したい「自分は何をしたいのか」
最初に確認したいのは、意外にも「資格」や「資金」ではありません。
なぜ、その障害福祉事業を始めたいのか。
ここを整理することが重要です。
「儲かりそうだから」だけでは危険
障害福祉事業は、公的な制度に基づいて報酬が決まる事業です。
そのため、一般的な店舗ビジネスのように「商品を売れば売るほど自由に利益が増える」という仕組みとは異なります。
指定基準を満たし、適切なサービスを提供し、決められたルールに従って報酬を請求する必要があります。
そのため、開業前には次の質問をしてみましょう。
| 確認すること | 自分への質問 |
|---|---|
| 目的 | なぜこの事業を始めたいのか? |
| 対象者 | 誰を支援したいのか? |
| サービス | どんな支援を提供したいのか? |
| 地域 | なぜその地域で始めたいのか? |
| 経営 | 事業として継続する覚悟があるか? |
この部分が曖昧なまま、いきなり物件探しを始めると、後から事業計画そのものを変更することになる場合があります。
第2章 福祉経験がないと開業できない?
「自分には福祉経験がないから、障害福祉事業はできないのではないか」と考える方もいます。
しかし、ここでは「経営者自身が何を担当するのか」と「事業所として必要な人員を確保できるのか」を分けて考える必要があります。
経営者がすべてを一人で行う必要はない
障害福祉事業では、サービスの種類に応じて、管理者、サービス管理責任者、児童発達支援管理責任者、生活支援員、職業指導員、世話人など、必要な職種があります。
つまり、経営者自身がすべての役割を担う必要があるとは限りません。
重要なのは、
「自分に何ができるか」ではなく、「事業所として必要な機能を誰が担うのか」
を決めることです。
開業前に確認したい人材チェック
| 項目 | 確認 |
|---|---|
| 管理者 | 誰が担当するのか |
| サービス管理責任者等 | 必要な資格・経験等を満たす人材を確保できるか |
| 直接支援職員 | 必要な職員を採用できるか |
| 事務・請求 | 誰が請求業務を担当するのか |
| 採用 | 退職した場合の補充方法を考えているか |
ここで重要なのは、「今いる人が足りるか」だけではなく、「その人が辞めた場合にどうするか」まで考えることです。
第3章 自分に「経営」ができるかを考える
障害福祉事業では、福祉に対する思いだけでは事業を継続できません。
必要なのは、支援と経営を両立させることです。
経営者に必要なのは「全部できること」ではない
経営者に求められるのは、すべての業務を自分で処理することではありません。
むしろ重要なのは、
- 数字を見る
- 人を採用する
- 人を育てる
- ルールを守る
- 問題が起きたときに判断する
- 必要な専門家に相談する
という経営者としての役割です。
こんな状態なら一度立ち止まる
- 売上や利益について考えていない
- 人材採用を誰かが何とかしてくれると思っている
- 利用者は開業すれば自然に集まると思っている
- 指定申請は書類を出せば終わると思っている
- 赤字になった場合の資金を考えていない
- 自分が現場に入れば何とかなると思っている
もちろん、これらが当てはまったからといって、開業できないという意味ではありません。
むしろ、開業前に気付けたこと自体が重要です。
第4章 お金の準備はできているか
障害福祉事業の開業では、「開業費用」だけを考えてはいけません。
重要なのは、開業してから売上が安定するまでの資金です。
必要なのは「開業資金+運転資金」
例えば、次のような費用が発生します。
- 法人設立関連費用
- 物件取得費
- 内装・改修費
- 備品・設備費
- 車両費
- 採用費
- 広告宣伝費
- 指定申請関連費用
- 人件費

- 家賃
- 通信費・光熱費
- その他の運営費
さらに、開業直後から満員になるとは限りません。
そのため、
「利用者が少ない状態でも何か月運営できるか」
を考える必要があります。
開業前に作っておきたい3つの数字
| 数字 | 考えること |
|---|---|
| 初期費用 | 開業するまでにいくら必要か |
| 毎月の固定費 | 利用者が少なくても発生する費用はいくらか |
| 必要売上 | 毎月いくら売上があれば事業を維持できるか |
この3つを知らないまま開業することは避けたいところです。
第5章 「利用者が集まるか」を考えているか
障害福祉事業では、指定を受けることがゴールではありません。
指定を受けた後、実際に利用者にサービスを利用してもらい、事業を継続していく必要があります。
「需要がある」と「自分の事業所に来る」は違う
地域に障害福祉サービスの需要があったとしても、すべての事業所に同じように利用者が集まるとは限りません。
例えば、
- どのような利用者を対象にするのか
- どんな支援を提供するのか
- どの地域から利用者が来るのか
- 相談支援事業所等とどのようにつながるのか
- 他の事業所と何が違うのか
などを考える必要があります。
開業前に作ってみたい「利用者像」
「誰でも利用できます」ではなく、まずは具体的に考えてみます。
| 項目 | 例 |
|---|---|
| 対象 | どのような障害・特性の方か |
| 年齢 | 主な年齢層はどこか |
| 生活圏 | どの地域から通うのか |
| ニーズ | 何に困っているのか |
| 支援内容 | どんなサービスを提供するのか |
| 選ばれる理由 | なぜ自分の事業所なのか |
これが明確になると、物件、職員、設備、広告、営業方法などの考え方も変わってきます。
第6章 物件を先に決めてはいけない理由
障害福祉事業の開業で特に注意したいのが物件です。
「良い物件を見つけたから、とりあえず契約しよう」という判断は慎重に行う必要があります。
なぜなら、障害福祉事業では、物件について確認すべき事項が複数あるからです。
- 用途や法令上の問題
- 建物・設備の条件
- 必要な面積
- 動線
- 消防関係
- 自治体の基準
- 改修の必要性
- 近隣環境
そのため、
「物件を見つけた→契約する→後から指定について確認する」
という順番ではなく、
「事業計画→必要条件の確認→物件確認→自治体等への確認→契約判断」
という流れを意識することが大切です。
開業前の重要ポイント
物件は「気に入ったから借りる」のではなく、「その事業を行うための条件を満たせるか」を確認してから判断します。
第7章 指定申請を「書類作成」と考えていないか
障害福祉事業では、自治体から指定を受けて事業を開始することになります。
ここで注意したいのは、指定申請を単なる書類作成だと考えないことです。
指定申請では、
- 法人
- 人員
- 設備
- 運営
- 事業計画
- 各種規程・マニュアル
- 関係書類
など、事業所として運営できる状態を整えていく必要があります。
つまり、指定申請は「開業準備の結果を行政に確認してもらうプロセス」とも考えられます。
第8章 「開業できるか」より「続けられるか」
ここまでチェックしてきたら、最後に考えたいのが継続性です。
障害福祉事業では、開業そのものがゴールではありません。
開業後には、
- 利用者の確保
- 職員の採用
- 職員の定着
- 支援の質
- 報酬請求
- 加算の管理
- 記録
- 運営指導
- 指定更新

- 資金繰り
など、継続して対応しなければならないことがあります。
だからこそ、開業前に考えるべき質問は、
「指定を取れるか?」だけではありません。
「5年、10年と事業を続けるための仕組みを作れるか?」
という視点も必要になります。
第9章 開業前セルフチェック20項目
ここまでの内容を、実際の開業前チェックにしてみましょう。
| No. | チェック項目 |
|---|---|
| 1 | なぜこの事業を始めたいのか説明できる |
| 2 | 支援したい利用者像が決まっている |
| 3 | 提供したいサービス内容が整理されている |
| 4 | 開業したい地域が決まっている |
| 5 | 事業所の規模・定員を考えている |
| 6 | 必要な職種を把握している |
| 7 | 必要な人材を確保できる見込みがある |
| 8 | 採用できなかった場合の代替策を考えている |
| 9 | 開業に必要な資金を把握している |
| 10 | 開業後の運転資金を確保している |
| 11 | 毎月必要な売上を把握している |
| 12 | 利用者が少ない場合の資金繰りを考えている |
| 13 | 地域の需要を調べている |
| 14 | 自分の事業所の特徴を説明できる |
| 15 | 物件の条件を整理している |
| 16 | 物件契約前に必要な確認事項を把握している |
| 17 | 指定申請までの流れを把握している |
| 18 | 開業後の運営体制を考えている |
| 19 | 運営指導や指定更新についても考えている |
| 20 | 事業を継続するための仕組みを考えている |
10項目以上「まだ決まっていない」なら、今は準備段階
このチェックで多くの項目に「まだ決まっていない」があったとしても、焦る必要はありません。
むしろ、開業前に分かったことが重要です。
障害福祉事業の開業では、最初からすべてを決める必要はありません。
大切なのは、
「何が決まっていて、何が決まっていないのか」
を整理することです。
そして、決まっていない項目について、順番を間違えずに一つずつ確認していきます。
まとめ|「自分にできるか」は、能力ではなく準備で考える
障害福祉事業を始めるとき、「自分にできるだろうか」と不安になるのは自然なことです。
しかし、ここで考えるべきなのは、
「自分一人ですべてできるか」
ではありません。
重要なのは、
- 必要な人材を確保できるか

- 必要な資金を準備できるか
- 必要な専門知識を補えるか
- 利用者を支援できる体制を作れるか
- 行政のルールに対応できるか
- 開業後も事業を継続できるか
ということです。
つまり、「自分にできるか?」という問いは、「必要なものを揃え、足りない部分をどう補うか?」という問いに置き換えることができます。
開業前だからこそ、自分の強みと不足している部分を整理しておくことが重要です。
次に考えるのは「お金」です
ここまで整理すると、次に多くの方が気になるのが、
「では、実際にいくらお金が必要なのか?」
という問題です。
障害福祉事業では、物件取得費、改修費、設備費、人件費、広告費など、開業前からさまざまな費用が発生します。
さらに重要なのは、開業した直後から利用者が定員いっぱいになるとは限らないことです。
そこで次回は、
「障害福祉事業の開業資金はいくら必要?売上・利益・運転資金から逆算する方法」
というテーマで、開業資金だけではなく、開業後の資金繰りまで考えていきます。
障害福祉事業の開業は、「指定を取ること」から始まるのではありません。
事業として成り立つか、人材を確保できるか、物件に問題がないか、必要な資金を準備できるか。
こうしたことを一つずつ確認していくことが、失敗を避けるための第一歩です。
