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令和9年度B型報酬改定|工賃2万円・3万円・4万円で利益はどう変わる?

令和9年度B型報酬改定|工賃2万円・3万円・4万円で利益はどう変わる?

「工賃を2万円から3万円に上げたら、B型事業所の利益はどうなるのか?」

「4万円まで工賃を上げれば、報酬も増えて経営も良くなるのか?」

就労継続支援B型を運営する経営者にとって、工賃は非常に重要なテーマです。

特に令和9年度障害福祉報酬改定を見据えると、平均工賃月額と基本報酬の関係を理解しておくことは、今後の事業所経営を考えるうえで欠かせません。

【最初に重要な注意点】

2026年9月時点では、令和9年度のB型報酬改定の具体的な単位数や工賃評価の仕組みは確定していません。

そのため、本記事では令和8年度の現行制度を基準に、「工賃2万円・3万円・4万円になった場合の経営インパクト」を試算します。

令和9年度の最終的な報酬単価が決定した場合には、改めてシミュレーションを更新する必要があります。

この記事のポイント

  • 工賃2万円・3万円・4万円では基本報酬区分が変わる
  • しかし「工賃を上げれば利益が増える」とは限らない
  • 工賃3万円への引上げで基本報酬が増えるケースがある
  • 一方で、工賃の支払額も利用者数に応じて増える
  • 工賃4万円を目指すなら、生産活動の売上・粗利構造が重要になる
  • 令和9年度に向けて「工賃・報酬・利用率・生産活動」の4つをセットで見る必要がある

令和9年度B型報酬改定で「工賃」が重要になる理由

就労継続支援B型では、平均工賃月額が基本報酬区分に関係しています。

つまり、工賃は単なる「利用者への支払額」ではありません。

基本報酬を決める重要な経営指標の一つでもあります。

令和8年度には、令和6年度の平均工賃月額の算定方法変更によって平均工賃月額が約6,000円上昇したことを踏まえ、基本報酬区分の基準額が原則3,000円引き上げられました。

これは、工賃の計算方法と基本報酬が密接に関係していることを示しています。

したがって、令和9年度を考えるときも、

工賃

↓

平均工賃月額

↓

基本報酬区分

↓

事業所収入

↓

利益

という関係を理解しておくことが重要です。

まず現在の報酬区分を確認する

令和8年度の見直し後、定員20人以下の場合、平均工賃月額が2万円以上2万3千円未満の場合は705単位、3万3千円以上3万5千円未満の場合は758単位、3万8千円以上4万5千円未満の場合は805単位となっています。

また、定員21人以上40人以下の場合は、平均工賃月額2万円以上2万3千円未満が637単位、3万円以上3万3千円未満が660単位、3万8千円以上4万5千円未満が717単位です。

定員 工賃2万円 工賃3万円 工賃4万円
20人以下 705単位 758単位 805単位
21~40人 637単位 660単位 717単位

※工賃2万円・3万円・4万円は、それぞれ該当する報酬区分に入るものとして表示しています。実際には「○万円ちょうど」を含む区分の範囲を確認する必要があります。

工賃2万円・3万円・4万円では報酬がどれくらい変わるのか

ここでは分かりやすく、

  • 営業日数:月22日
  • 稼働率:90%
  • 1単位=10円として簡易計算
  • 基本報酬のみを比較

という条件で計算します。

実際の請求額は地域区分、加算、減算、各種算定条件などによって変わりますので、あくまで構造を理解するためのモデルです。

定員20人の場合

定員20人で稼働率90%の場合、1日平均18人が利用すると仮定します。

月22日営業なら、

18人×22日=396人日

となります。

平均工賃 基本報酬 月間基本報酬
2万円 705単位 約279万円
3万円 758単位 約300万円
4万円 805単位 約319万円

単純比較すると、工賃2万円から3万円になることで、基本報酬は月約21万円増加します。

さらに3万円から4万円になると、約19万円増加します。

しかし、ここで注意しなければならないのが工賃支払額の増加です。

工賃を2万円から3万円にすると「30万円」増える

定員20人、稼働率90%の場合、平均18人が工賃支払対象者として単純化すると、

2万円→3万円

では、

1万円×18人=18万円/月

工賃支払額が増えることになります。

さらに、

3万円→4万円

でも同じく約18万円/月増加します。

工賃 月間工賃支払額 前段階との差
2万円 36万円 -
3万円 54万円 +18万円
4万円 72万円 +18万円

つまり、

「基本報酬が増える」

だけを見てはいけません。

「工賃支払額も増える」

からです。

ここがB型経営で非常に重要

例えば定員20人の場合、工賃2万円から3万円にすると、今回の単純モデルでは基本報酬が約21万円増えます。

一方、工賃支払額は約18万円増えます。

この差額は、

約3万円

です。

もちろん、実際の経営では加算、生産活動収支、人件費、その他経費などがあります。

しかし、ここから分かることがあります。

工賃を上げること自体が利益改善になるとは限らない。

工賃上昇によって報酬が増えても、その増加分の多くが工賃支払額に消える可能性があります。

定員30人ではどうなるか

次に定員30人で考えます。

稼働率90%なら、平均利用者数は27人です。

月22日営業の場合、

27人×22日=594人日

となります。

平均工賃 基本報酬 月間基本報酬 月間工賃
2万円 637単位 約378万円 54万円
3万円 660単位 約392万円 81万円
4万円 717単位 約426万円 108万円

ここでは非常に興味深い結果になります。

定員30人の場合、工賃2万円から3万円になると、基本報酬は約14万円増加します。

しかし、工賃支払額は約27万円増加します。

つまり、単純に考えると、

報酬の増加額より工賃支払額の増加額の方が大きい

ということになります。

定員40人ではどうなるか

定員40人、稼働率90%の場合は平均36人が利用すると仮定します。

月22日営業なら、

36人×22日=792人日

となります。

平均工賃 基本報酬 月間基本報酬 月間工賃
2万円 637単位 約505万円 72万円
3万円 660単位 約523万円 108万円
4万円 717単位 約568万円 144万円

定員40人でも、工賃を上げることによる報酬増加だけでは、工賃支払額の増加を完全に吸収できないケースがあります。

「工賃4万円」を目指すなら何が必要なのか

ここからが、B型経営で最も重要なポイントです。

工賃4万円を目標にするなら、単純に「4万円を支払えばいい」という話ではありません。

4万円を継続的に支払えるだけの生産活動収支を作る必要があります。

例えば、原価率50%、つまり売上の半分が材料費・外注費などにかかると仮定します。

目標工賃 必要な粗利 必要売上の目安
2万円 2万円 4万円
3万円 3万円 6万円
4万円 4万円 8万円

つまり、原価率50%という単純モデルなら、利用者1人あたり月8万円程度の生産活動売上があって、ようやく4万円の粗利を確保できます。

もちろん、実際の生産活動では商品・サービスによって原価率が異なります。

したがって、これは「工賃4万円なら売上8万円が絶対必要」という基準ではありません。

あくまで、工賃と生産活動の関係を見るためのモデルです。

工賃2万円・3万円・4万円の経営構造を比較する

工賃 報酬 工賃支払 生産活動への要求
2万円 比較的低い区分 低い 比較的低い
3万円 中間的な区分 増加 売上・粗利改善が必要
4万円 高い区分 さらに増加 高い生産性・高付加価値化が必要

ここから分かるのは、

工賃を上げるほど、事業所には「工賃を支払える仕組み」が求められる

ということです。

工賃3万円は「報酬と工賃のバランス」を考えるポイント

今回のシミュレーションで特に注目したいのが「3万円」です。

定員20人以下では、平均工賃月額3万円は3万3千円未満の区分に入り、令和8年度は758単位となります。

定員21~40人では、3万円以上3万3千円未満は660単位です。

つまり、2万円台から3万円台へ移行すると、基本報酬区分が変わります。

しかし、定員21~40人の場合、2万円台から3万円台への報酬単位差は、定員20人以下の場合ほど大きくありません。

そのため、

「工賃を1万円上げれば報酬がそれ以上増える」

とは限りません。

工賃を上げる前に「1万円増加の原資」を計算する

工賃を2万円から3万円へ引き上げる場合、利用者1人あたり月1万円の追加原資が必要です。

利用者30人なら、

1万円×30人=30万円/月

年間では、

30万円×12か月=360万円

です。

つまり、平均工賃を1万円引き上げるということは、利用者30人の事業所なら、単純計算で年間360万円の追加工賃原資が必要になります。

利用者数 工賃+1万円 年間追加工賃
20人 +20万円/月 +240万円/年
30人 +30万円/月 +360万円/年
40人 +40万円/月 +480万円/年

この数字を見ると、工賃向上は単なる「福祉サービスの目標」ではなく、事業所経営そのものであることが分かります。

利益シミュレーションでは「工賃」だけを見てはいけない

B型事業所の利益を考える場合、最低でも次の項目を入れる必要があります。

B型事業所の簡易損益構造

基本報酬+ 加算+ 生産活動収入

- 生産活動経費- 工賃- 人件費- 家賃- 水道光熱費- 車両費- その他経費

= 事業所の利益

この構造で見ると、工賃だけを上げても利益が自動的に増えるわけではありません。

工賃4万円を実現するには「高単価化」が重要になる

工賃を上げるために、単純に作業量を増やすだけでは限界があります。

例えば、

  • 内職単価が低い
  • 作業時間が長い
  • 検品・納品に職員の時間がかかる
  • 材料費が高い
  • 不良品率が高い
  • 営業活動をしていない

という事業所では、利用者数を増やしても工賃が大きく伸びない場合があります。

そのため、工賃3万円、4万円を目指すのであれば、

  • 作業単価を上げる
  • 企業からの受注単価を見直す
  • 高付加価値商品を作る
  • EC販売を活用する
  • 法人向け業務を開拓する
  • 施設外就労を組み合わせる
  • IT・デザイン・動画・Web関連などの業務を検討する
  • 作業工程を標準化する

など、「1時間あたり、1人あたり、どれだけの付加価値を生み出せるか」という視点が重要になります。

「利用率」も工賃と同じくらい重要

工賃を高く設定していても、利用率が低ければ事業所全体の収入は減少します。

例えば定員30人の場合、

稼働率 平均利用者数 22日営業の場合
70% 21人 462人日
80% 24人 528人日
90% 27人 594人日
100% 30人 660人日

同じ平均工賃3万円でも、利用率70%と90%では事業所全体の収入構造が大きく変わります。

したがって、B型経営では、

工賃 × 利用率 × 生産活動 × 基本報酬

をセットで考える必要があります。

短時間利用者が多い事業所ではさらに注意が必要

前の記事でも解説したように、B型には短時間利用者もいます。

短時間利用者がいること自体を問題と考えるのではなく、事業所全体の利用実態を把握することが重要です。

特に、

  • 平均利用時間
  • 平均利用日数
  • 短時間利用者割合
  • 延べ利用者数
  • 工賃支払総額
  • 平均工賃月額
  • 生産活動への参加時間

を把握しておく必要があります。

令和6年度改定では、障害特性等によって利用日数が少ない方を多く受け入れる場合を考慮して、平均工賃月額の算定方法が見直されました。現在は、年間工賃支払総額を年間延べ利用者数と年間開所日数から算出した平均利用者数で割り、12か月で割る方式が用いられています。

このため、単純に「利用者1人あたりの工賃」だけを見るのではなく、利用実態と工賃の関係を管理することが重要です。

令和9年度に向けた「工賃経営シミュレーション表」を作る

令和9年度の制度内容が確定する前から、自事業所用のシミュレーション表を作っておくことをおすすめします。

項目 現在 工賃3万円 工賃4万円
利用者数 ○人 ○人 ○人
稼働率 ○% ○% ○%
平均工賃 ○円 30,000円 40,000円
基本報酬 ○単位 該当区分 該当区分
生産活動売上 ○円 ○円 ○円
工賃総額 ○円 ○円 ○円
人件費 ○円 ○円 ○円
営業利益 ○円 ○円 ○円

令和9年度改定で見るべきなのは「工賃の金額」だけではない

令和9年度報酬改定について、今後具体的な内容が示されることになります。

しかし、事業所経営者が見るべきなのは、単純な「単位数」だけではありません。

重要なのは、

① 工賃

↓

② 基本報酬

↓

③ 利用率

↓

④ 生産活動収支

↓

⑤ 人件費

↓

⑥ 営業利益

という一連の流れです。

例えば、報酬単位が上がっても、工賃支払額がそれ以上に増えれば利益は減る可能性があります。

逆に、工賃を上げても、生産活動の売上・粗利を大きく改善できれば、経営全体として成立する可能性があります。

「工賃4万円」を目標にする前に確認したい10項目

チェック 確認内容
□ 現在の平均工賃月額を把握している
□ 工賃を1万円上げた場合の年間追加負担を計算している
□ 生産活動売上を把握している
□ 生産活動の原価率を把握している
□ 利用率を把握している
□ 短時間利用者の割合を把握している
□ 利用者1人あたりの生産活動売上を把握している
□ 人件費率を把握している
□ 工賃向上後の利益を試算している
□ 工賃向上を継続できる生産活動の仕組みがある

まとめ|「工賃を上げれば儲かる」ではなく「工賃を上げても利益が残る構造」を作る

令和9年度B型報酬改定については、2026年9月時点で具体的な最終内容は確定していません。

しかし、現在の制度を見ると、平均工賃月額と基本報酬は密接に関係しています。

令和8年度には、平均工賃月額の算定方法変更による影響を踏まえ、基本報酬区分の基準額が見直されました。

そのため、令和9年度に向けてB型事業所が今から考えておくべきなのは、単純な「工賃アップ」ではありません。

工賃2万円

↓

工賃3万円

↓

工賃4万円

↓

そのために必要な売上・粗利は?

↓

人件費を払っても利益は残るか?

↓

継続可能な事業所になっているか?

この視点が重要です。

特に、工賃を1万円上げるだけでも、利用者30人なら年間360万円、40人なら年間480万円の追加工賃原資が必要になります。

だからこそ、工賃向上を考えるときは、

「いくら払うか」

ではなく、

「その工賃を生み出す売上と粗利をどう作るか」

まで考える必要があります。

令和9年度の報酬改定に備えるということは、単位数を予想することではありません。

自事業所が、どの工賃水準なら安定して利益を残せるのかを、今のうちに数字で把握しておくことです。

行政書士犬飼和昭事務所|B型事業所の「報酬」と「経営」を一緒に考える

就労継続支援B型の経営では、指定基準だけを確認していても十分ではありません。

実際には、

利用者数 → 稼働率 → 基本報酬 → 加算 → 生産活動 → 工賃 → 人件費 → 利益

という一連の構造を確認する必要があります。

行政書士犬飼和昭事務所では、愛知県・名古屋市を中心に、障害福祉事業所の指定申請、運営、報酬・加算、運営指導、指定更新などについて、事業所の実態に合わせた整理をサポートしています。

「工賃を上げた方がいいのか」だけではなく、「工賃を上げた場合、事業所の利益がどう変わるのか」まで考えることが、令和9年度に向けた経営準備につながります。

よくある質問

Q1.令和9年度から工賃4万円なら高い報酬になると決まっていますか?

A.2026年9月時点では、令和9年度の具体的な報酬単位は確定していません。本記事の計算は令和8年度の制度を基準にしたシミュレーションです。

Q2.工賃を2万円から3万円に上げれば利益も増えますか?

A.必ずしも増えるとは限りません。基本報酬が増える一方で、利用者に支払う工賃も増加します。さらに、生産活動の売上や人件費なども考慮する必要があります。

Q3.工賃4万円を目指すべきですか?

A.工賃水準だけを目標にするのではなく、利用者の支援目標、生産活動の内容、事業所の収支などを総合的に考える必要があります。重要なのは、継続して支払える仕組みがあるかどうかです。

Q4.工賃向上のためには何を改善すればいいですか?

A.生産活動の単価、受注内容、作業効率、原価率、利用率、利用者の作業参加などを確認します。特に「利用者1人あたり、1日あたり、どれだけの売上・粗利を生み出せるか」を見ることが重要です。

Q5.令和9年度改定までに何を準備すればよいですか?

A.現在の平均工賃月額、利用率、短時間利用者割合、生産活動売上、生産活動経費、工賃総額、人件費、営業利益などを月次で把握してください。制度の詳細が決まった際に、自事業所への影響を具体的に試算できるようになります。

※本記事は2026年9月25日時点の公開情報をもとに作成しています。令和9年度障害福祉報酬改定については、今後の検討・告示・通知等により内容が変更される可能性があります。実際の報酬算定については、改定後の正式な告示・通知・Q&A等をご確認ください。また、本記事の損益シミュレーションは一定の仮定に基づく試算であり、実際の事業所の収益を保証するものではありません。

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