障害福祉事業所の総量規制とは?指定申請・更新・開業に与える影響を行政書士が徹底解説
【障害福祉事業所の総量規制とは?指定申請・更新・開業に与える影響を行政書士が徹底解説
「書類は全部そろっているのに、なぜか指定申請が前に進まない」「最近、新規の障害福祉事業所は厳しいと言われた」──こうした声を、私は行政書士として数多く聞いてきました。その背景にあるのが、障害福祉事業所の“総量規制”です。
本記事では、法律には明文化されていないものの、実務上確実に存在する総量規制について、開業予定者・運営中事業所の双方に向けて、制度背景から実務対応までを網羅的に解説します。
1. なぜ今「総量規制」が問題になるのか
障害福祉サービスは、国が定めた報酬体系に基づき、利用者数に応じて給付費が支払われる仕組みです。しかし近年、就労継続支援B型や放課後等デイサービスを中心に事業所数が急増し、給付費が右肩上がりとなっています。
この結果、国・都道府県・市町村は「このままでは制度が持続しない」という危機感を強め、表に出にくい形で新規指定を調整するようになりました。それが総量規制の実態です。
2. 総量規制とは何か|法律と実務のギャップ
まず重要なのは、障害者総合支援法や児童福祉法に「総量規制」という言葉は存在しないという点です。
しかし実務では、以下のような形で運用されています。
- 指定権者が事前相談段階で慎重姿勢を示す
- 補正指示が長期化し、事実上進まない
- 定員削減・条件付き指定を求められる
これは違法な規制ではなく、「裁量行政」の範囲内で行われているため、表立って争いにくいのが特徴です。
3. 総量規制が強化されている3つの理由
① 障害福祉給付費の急増
障害福祉給付費は、制度開始当初と比べて倍以上に膨らんでいます。特にB型・放課後等デイサービスは増加率が高く、行政側の警戒感が強まっています。
② サービスの質への懸念
数を優先した結果、支援の質が追いついていない事業所も存在します。総量規制は質の担保という側面も持っています。
③ 2026年臨時報酬改定との連動
2026年には臨時報酬改定が予定されており、新規指定事業所の報酬引き下げが議論されています。総量規制はこの流れと密接に関係しています。
4. 実務で見える「総量規制のサイン」チェックリスト
| チェック項目 | 内容 |
|---|---|
| 事前相談 | 「今は慎重に判断しています」と言われる |
| 補正対応 | 細かい修正指示が何度も続く |
| 定員 | 定員を下げるよう誘導される |
| 時期 | 「来年度以降で再検討」を示唆される |
5. サービス別|総量規制の影響度
| サービス種別 | 規制の強さ | 理由 |
|---|---|---|
| 就労継続支援B型 | 高 | 事業所数増・給付費増大 |
| 放課後等デイサービス | 非常に高 | 少子化との逆行 |
| グループホーム | 中 | 地域差が大きい |
| 生活介護 | 低〜中 | 設備・人員要件が重い |
6. 名古屋市・愛知県における総量規制の実務運用(ローカル特化)
名古屋市の場合(政令指定都市)
名古屋市は政令指定都市のため、就労継続支援B型・放課後等デイサービス等の指定権者は名古屋市健康福祉局 障害福祉部です。実務上は、区役所(保健センター)との連携も重視されており、事前相談段階から総量規制の影響を受けやすい特徴があります。
- 区ごとに事業所数・利用者数の把握が進んでいる
- 「そのエリアに本当に必要か」を重視
- 放課後等デイサービス・B型は特に慎重
愛知県の場合(県指定)
名古屋市以外の市町村では、原則として愛知県(障害福祉課)が指定権者となります。愛知県は広域的な視点で総量管理を行うため、圏域単位での需給バランスが強く意識されます。
- 市町村意見書の内容が重要
- 地域ニーズの客観資料が求められる
- 名古屋市よりも書面重視の傾向
7. 名古屋市・愛知県で総量規制がかかりやすいケース
- 同一圏域・同一区内に同種事業所が集中している
- 既存事業所との差別化が説明できない
- 定員が過大で現実性に欠ける
- 工賃・就労実績などの裏付けが弱い
8. 総量規制下でも指定が通る事業所の共通点
- 地域ニーズを数値・資料で説明できる
- 既存事業所との差別化が明確
- 人員・定員・収支が現実的
- 実地指導・更新を見据えた設計
7. 開業予定者が取るべき現実的戦略
総量規制時代の開業では、「やりたい」よりも「通る設計」が重要です。
- 開業時期をずらす判断
- 定員・サービス類型の調整
- 多機能化・法人戦略の検討
8. 行政書士が関与するメリット
行政書士は、単なる書類作成者ではありません。総量規制下では、事前相談の進め方・説明資料の組み立て方が結果を左右します。
- 指定権者の視点を踏まえた資料設計
- NG表現・NG構成の回避
- 代替案の提示
9. 無料相談で確認できること
- 今の計画が総量規制に抵触する可能性
- 通る可能性を高める修正点
- 指定申請・更新までの現実的スケジュール
相談前に準備しておくとよい資料
- 事業計画(簡易でOK)
- 物件情報
- 希望する開業時期
9-2. 事前相談で行政が“内心チェックしているポイント”(実務暴露)
事前相談は「形式確認の場」と思われがちですが、実際には指定を出すかどうかの方向性がほぼ決まる重要な局面です。ここでは、行政側が表では言わないが、確実に見ているポイントを整理します。
① この事業所、本当に“地域に必要”か?
最重要ポイントです。単に「利用者がいそう」では足りません。
- 既存事業所で対応できていない層は誰か
- 圏域・区内で不足している機能は何か
- 数値・資料で説明できるか
② 定員・人員は“給付費を取りに来ていないか”
過大な定員設定や人員配置は、給付費目的の開業ではないかという疑念につながります。
- 最初から定員MAXで申請していないか
- 実利用を想定した人員か
- 報酬減でも耐えられる設計か
③ 実地指導・更新まで想像できる運営か
行政は「指定後」を強く意識しています。
- 個別支援計画が形骸化しないか
- 工賃・就労実績は説明できるか
- 人員基準違反のリスクはないか
④ 代表者・管理者は“制度理解があるか”
ここは非常に現実的なチェックです。
- 制度趣旨を理解しているか
- 質問に対して一貫した回答ができるか
- 行政と対話できる人物か
⑤ 行政書士など専門家が関与しているか
明言されることはありませんが、専門家が関与している案件は明らかに説明の精度が違うと見られています。
事前相談でNGになりやすい発言例(要注意)
- 「とりあえず指定だけ取れれば」
- 「他もやっているから大丈夫だと思って」
- 「収支は始めてから考えます」
10. 総量規制が理由で止まった実例と、修正して通った実例
実例①|就労継続支援B型(名古屋市・新規開業)
【当初計画】
定員20名、職業指導員・生活支援員を手厚く配置し、工賃作業は軽作業中心。地域説明は「利用希望者が多いと聞いている」という抽象的な内容でした。
【止まった理由】
事前相談段階で「同一区内に既存B型が多い」「差別化が弱い」「定員が過大」と指摘され、補正が繰り返される中で事実上ストップしました。
【修正内容】
- 定員を20名→14名に減少
- 既存事業所では対応できていない障害特性に特化
- 工賃作業を地域企業との受託業務に変更
【結果】
総量規制に配慮した現実的計画として評価され、指定取得。
実例②|放課後等デイサービス(愛知県・県指定)
【当初計画】
定員10名、一般的な療育内容。市町村意見書は形式的な記載のみ。
【止まった理由】
圏域内に同種事業所が多く、「新規性・必要性が見えない」と判断。
【修正内容】
- 発達障害・不登校支援に特化
- 学校・相談支援事業所との連携体制を明文化
- 市町村意見書を実態反映型に修正
【結果】
圏域ニーズが明確になり、指定取得。
実例③|指定更新時に総量規制的指摘を受けたケース
【状況】
既存B型事業所。更新自体は問題ないが、実地指導で「定員と実利用の乖離」「工賃実績の弱さ」を指摘。
【対応】
- 定員の見直し
- 工賃向上計画の実効性強化
- 人員配置の適正化
【結果】
改善報告後、更新完了。次期更新への警告付き指摘で収束。
まとめ|総量規制を知らずに進むのが最大のリスク
障害福祉事業所の総量規制は、知らなかったでは済まされない実務リスクです。しかし、正しく理解し、戦略的に設計すれば、道は閉ざされていません。
行政書士 犬飼和昭事務所では、総量規制を前提とした指定申請・更新・運営支援を行っています。「この計画で進めて大丈夫か」と感じたら、ぜひ一度ご相談ください。
