令和9年度就労継続支援B型の報酬改定
既存事業所が今から確認すべきポイントを行政書士が解説
就労継続支援B型を運営している事業者にとって、令和9年度障害福祉サービス等報酬改定は、今後の事業経営を考えるうえで重要なテーマです。
「B型の基本報酬はどうなるのか」
「工賃の評価は変わるのか」
「短時間利用者が多い事業所はどうなるのか」
「加算はどう見直されるのか」
「今の事業所運営のままで大丈夫なのか」
このような疑問を持っている事業者の方も多いのではないでしょうか。
この記事のポイント
- 令和9年度報酬改定は、2026年9月現在、まだ最終決定されていません。
- B型についても、基本報酬、工賃、生産活動、利用実態、サービスの質などが重要な論点になります。
- 短時間利用者の割合や利用時間についても、今後の議論を注視する必要があります。
- 加算は「取れるか」だけでなく「継続して算定できる体制か」を確認することが重要です。
- 既存事業所は、今のうちから稼働率、人件費、工賃、加算、記録、支援体制を整理しておくことが重要です。
なお、この記事では、現時点で公表されている情報と、今後の制度改定を見据えた事業所側の準備を分けて解説します。
令和9年度の具体的な報酬単価や算定要件が確定したことを意味するものではありません。
令和9年度の就労継続支援B型報酬改定はどうなる?
要点
- 2026年9月現在、令和9年度のB型報酬は確定していません。
- 厚生労働省では、令和9年度障害福祉サービス等報酬改定に向けた検討が進められています。
- B型については、基本報酬だけではなく、工賃、生産活動、利用実態、サービスの質などを総合的に見る必要があります。
厚生労働省では、2026年4月から令和9年度障害福祉サービス等報酬改定に向けた検討が開始されています。
2026年8月27日の障害福祉サービス等報酬改定検討チームでは、「令和9年度障害福祉報酬改定に向けた主な論点(案)」が示され、その後、9月17日の社会保障審議会障害者部会でも議論の状況が報告されています。
したがって、現時点では「B型の報酬が○単位になる」といった具体的な話よりも、どのような考え方で制度が見直される可能性があるのかを把握することが重要です。
就労継続支援B型で特に注目したい6つのポイント
令和9年度報酬改定をB型事業所の経営という視点から考えると、特に次の6項目を確認しておきたいところです。
| 項目 | 確認するポイント |
|---|---|
| ①基本報酬 | 現在の売上構造と基本報酬への依存度 |
| ②工賃 | 平均工賃・生産活動・工賃向上の取組 |
| ③利用時間 | 短時間利用者の割合と利用実態 |
| ④加算 | 取得状況と算定根拠 |
| ⑤サービスの質 | 個別支援・記録・職員体制・地域連携 |
| ⑥経営 | 稼働率・人件費・利益・継続可能性 |
この6項目を順番に確認していきましょう。
①基本報酬|「単価」だけを見てはいけない
就労継続支援B型の報酬を考えるとき、最初に気になるのが基本報酬です。
しかし、令和9年度の具体的な基本報酬は、2026年9月現在まだ確定していません。
そのため、現段階で「上がる」「下がる」と断定することはできません。
むしろ重要なのは、現在の事業所が基本報酬にどれだけ依存しているのかを確認することです。
例えば、月間売上を次のように分けて管理します。
B型の売上構造
基本報酬+各種加算+生産活動等に関する収入+その他収入=月間売上
この構造を把握しておけば、今後報酬体系が変更された場合でも、自事業所への影響を具体的に検討できます。
②工賃|B型経営では重要な確認項目
就労継続支援B型において、工賃は事業所の支援内容や生産活動を考えるうえで重要な指標です。
ただし、工賃を単純に「高ければよい」と考えるだけでは十分ではありません。
重要なのは、
- どのような生産活動を行っているのか
- 生産活動の売上はいくらか
- 原材料費はいくらか
- 必要経費はいくらか
- 利用者にどのように工賃を配分しているのか

- 工賃向上のための具体的な取組があるか
という点です。
特にB型では、工賃を上げることと事業所の経営を両立させる必要があります。
重要「工賃を上げること」と「事業所の利益を増やすこと」は、必ずしも同じではありません。
生産活動の売上、原価、人件費、利用者数、稼働率などを含めて全体を確認する必要があります。
③短時間利用者|利用時間を把握しておく
今後のB型事業所の経営を考えるうえで、利用時間は重要な管理項目です。
事業所によっては、利用者の中に短時間利用者が多く含まれている場合があります。
その場合、単純な「登録利用者数」だけを見ても、事業所の実態を正確に把握できません。
例えば、次のような管理を行います。
| 区分 | 利用者数 | 割合 |
|---|---|---|
| 短時間利用 | ○人 | ○% |
| 標準的な利用時間 | ○人 | ○% |
| 長時間利用 | ○人 | ○% |
令和9年度改定の具体的な取扱いについては今後の議論を確認する必要がありますが、事業所としては、今のうちから利用者の実際の利用時間を正確に把握しておくことが重要です。
④加算|「取得している」だけでは不十分
B型事業所の収益を考えると、加算は重要な要素です。
しかし、加算については「いくら取れるか」だけではなく、次の点を確認してください。
- 現在取得している加算
- 算定要件
- 必要な職員配置
- 必要な支援内容
- 必要な会議
- 必要な研修
- 必要な記録
- 届出状況
- 実際の運用状況
特に注意したいのが、「届出上は要件を満たしているが、実際の運用や記録が追いついていない」という状態です。
報酬改定を機会として、現在取得している加算を一度棚卸ししておくことをおすすめします。
⑤サービスの質|B型にも「支援の中身」が問われる
令和9年度報酬改定では、サービスの質の確保・向上も重要なテーマです。
厚生労働省の検討資料では、事業者の質の確保、運営基準、報酬算定要件、管理者等の要件、研修などが論点として挙げられています。
B型事業所でも、単に作業を提供しているだけではなく、利用者一人ひとりの状況に応じて、どのような支援を行っているのかを説明できることが重要です。
例えば、次の流れが一貫しているか確認します。
↓
個別支援計画
↓
日々の支援
↓
支援記録
↓
モニタリング
↓
計画の見直し
この一連の流れがつながっていれば、事業所として「なぜこの支援を行っているのか」を説明しやすくなります。
⑥経営|B型は「定員×単価」だけでは判断できない
B型事業所の経営を考える場合、単純に「定員が多いほど売上が多い」と考えることはできません。
重要なのは、
- 定員
- 利用者数
- 稼働率
- 利用時間
- 基本報酬
- 加算
- 人員配置
- 人件費
- 家賃等の固定費
- 生産活動収支
を一体として考えることです。
B型事業所の経営構造
定員×稼働率×利用状況・報酬
+加算
-人件費・固定費
-生産活動等の経費
=事業所の利益
令和9年度報酬改定への対応では、この構造を数字で把握しておくことが非常に重要です。
定員20名・30名・40名で何が変わる?
例えば、同じB型事業所でも定員によって必要な職員体制や固定費、利用者確保の考え方は変わります。
| 項目 | 20名 | 30名 | 40名 |
|---|---|---|---|
| 定員 | 20名 | 30名 | 40名 |
| 利用者確保 | 比較的少ない | 中程度 | より重要 |
| 職員体制 | 要確認 | 要確認 | 要確認 |
| 固定費 | 比較的抑えやすい | 増加 | さらに増加 |
ここで重要なのは、「定員を増やせば必ず利益が増える」とは限らないことです。
定員を増やす場合には、利用者を確保できるのか、必要な職員を確保できるのか、物件や設備は対応できるのか、固定費を吸収できるのかまで検討する必要があります。
稼働率はB型事業所の重要な経営指標
例えば定員30名のB型事業所であっても、実際の利用状況が低ければ、定員30名分の収益を得ることはできません。
そこで、毎月の稼働率を確認します。
稼働率の基本的な考え方
実際の利用状況÷利用可能な定員・日数等
=稼働状況
具体的な算定方法はサービスの実態や管理方法に応じて設定する必要がありますが、少なくとも事業所内では、定員に対して実際にどれだけ利用されているのかを継続的に把握しておくことが重要です。
短時間利用者が多いB型事業所が確認しておきたいこと
短時間利用者が多い事業所では、単純に利用者数だけを見て経営判断をすると、実態とのずれが生じる可能性があります。
そこで、利用者を例えば次のように分類して確認します。
| 確認項目 | 確認内容 |
|---|---|
| 利用者数 | 登録人数・実利用人数 |
| 利用時間 | 利用者ごとの実績 |
| 利用日数 | 月間利用日数 |
| 欠席 | 欠席状況と理由 |
| 支援内容 | 利用時間に応じた支援内容 |
こうしたデータを蓄積しておけば、今後の報酬改定の内容が示された際に、事業所への影響を具体的に検討できます。
令和9年度改定に向けてB型事業所が今からやるべき10の準備
□ 現在の定員を確認する
□ 月間の実利用者数を確認する
□ 稼働率を確認する
□ 利用者ごとの利用時間を確認する
□ 基本報酬による収入を確認する
□ 取得している加算を一覧化する
□ 各加算の算定要件を確認する
□ 平均工賃と工賃向上の取組を確認する
□ 人件費と職員配置を確認する
□ 支援記録・個別支援計画等を確認する
この10項目を整理しておくだけでも、今後の改定への対応がかなりしやすくなります。
特に注意したい「記録」の問題
B型事業所では、支援そのものだけではなく、その支援をどのように記録しているのかも重要です。
例えば、個別支援計画では「作業能力の向上」を目標としているのに、日々の支援記録には作業の実施状況しか残っていないという場合があります。
この場合、計画と実際の支援とのつながりが見えにくくなります。
そのため、次のような流れを確認します。
↓
課題・ニーズの整理
↓
個別支援計画
↓
日々の支援
↓
支援記録
↓
モニタリング
↓
次の計画へ反映
この流れが事業所内で一貫しているかを確認してください。
令和9年度報酬改定と運営指導はつながっている
報酬改定と運営指導を別々の問題として考えている事業所もあります。
しかし、実際には密接に関係しています。
例えば、加算を算定するためには一定の体制や記録が必要になる場合があります。
そのため、
↓
算定要件
↓
運営体制
↓
職員配置・支援
↓
記録
↓
運営指導
という関係を理解しておくことが重要です。
つまり、令和9年度報酬改定への対応は、単なる「請求事務の変更」ではありません。
事業所の運営そのものを見直す機会として考える必要があります。
令和9年度報酬改定でB型事業所の経営はどう考えるべきか
ここまで見てきたように、B型事業所の経営を考える際には、単価だけを見るのでは不十分です。
重要なのは次の関係です。
↓
利用日数・利用時間
↓
基本報酬・加算
↓
売上
↓
人件費・固定費・生産活動経費
↓
利益
さらに、その裏側には、
人員配置・個別支援計画・支援記録・職員研修・会議・マニュアル
があります。
つまり、B型事業所の収益構造を改善するためには、報酬だけを見ても十分ではありません。
「報酬が上がれば利益も増える」とは限らない
これは、令和9年度改定を考えるうえで特に重要なポイントです。
例えば、仮に報酬上の評価が高くなったとしても、そのために職員を増やす必要があれば人件費が増加します。
新しい加算を取得できたとしても、研修、記録、会議、管理などの業務が増える場合があります。
そのため、事業所としては、
「売上が増えるか」
だけではなく、
「利益がどう変わるか」
まで考える必要があります。
B型事業所が今から作っておきたい「改定対応シート」
今の段階でおすすめしたいのが、次のような一覧表です。
| 項目 | 現在 | 改定後確認 |
|---|---|---|
| 定員 | ○名 | 変更要否 |
| 稼働率 | ○% | 影響確認 |
| 平均利用時間 | ○時間 | 影響確認 |
| 平均工賃 | ○円 | 影響確認 |
| 加算 | ○件 | 継続・変更 |
| 人件費 | ○円 | 影響確認 |
| 営業利益 | ○円 | シミュレーション |
令和9年度の具体的な制度内容が決まった後、この表の「改定後確認」の欄を埋めていけば、自事業所への影響を整理できます。
行政書士に相談するなら、B型事業所の「運営全体」を確認する
令和9年度報酬改定について行政書士に相談する場合、「この加算は取れますか?」という質問だけで終わらせる必要はありません。
むしろ、次のような項目をまとめて確認することが重要です。
- 現在の指定状況
- 人員配置
- 加算取得状況
- 運営規程
- 各種マニュアル
- 個別支援計画
- アセスメント
- モニタリング
- 支援記録
- 職員研修
- 会議記録
- 運営指導への対応
- 指定更新への対応
- 報酬改定後の収支
報酬改定をきっかけに、これらを一度整理しておくことが、将来のリスクを減らすための基本になります。
行政書士犬飼和昭事務所が考えるB型事業所の改定対応
就労継続支援B型は、単に「利用者を集めれば売上が増える」という事業ではありません。
利用者の支援、職員配置、生産活動、工賃、加算、記録、運営体制などを一つの仕組みとして考える必要があります。
令和9年度報酬改定についても、単に報酬単価だけを確認するのではなく、
↓
運営体制
↓
支援
↓
加算・報酬
↓
記録・運営指導
↓
事業所の継続
という一連の流れで考えることが重要です。
行政書士犬飼和昭事務所では、愛知県・名古屋市を中心に、障害福祉事業所の指定申請、指定更新、運営体制、加算、運営指導等について、事業所の実態に応じた支援を行っています。
令和9年度改定に向けて、今のB型事業所を確認してみませんか?
次のような場合は、今のうちから事業所の状態を整理しておくことをおすすめします。
- 現在の加算取得状況を整理したい
- 短時間利用者が多く、今後の影響が気になる
- 工賃向上と事業所経営を両立したい
- 人員配置に不安がある
- 支援記録や個別支援計画を見直したい
- 運営指導に備えたい
- 指定更新に向けて問題点を整理したい
- 令和9年度改定後の収支をシミュレーションしたい
報酬改定の内容が確定してから対応するのではなく、今の事業所の状態を把握しておくことが重要です。
まとめ|令和9年度B型報酬改定は「事業所の構造」を見直す機会
令和9年度障害福祉サービス等報酬改定については、2026年9月現在、具体的な報酬単価等はまだ確定していません。
しかし、B型事業所として今から準備できることはあります。
まず確認したいのは、
- 基本報酬
- 工賃
- 利用時間
- 短時間利用者
- 加算
- 稼働率
- 人員配置
- 人件費
- 支援記録
- 個別支援計画
です。
そして、これらを別々に見るのではなく、
↓
支援
↓
報酬・加算
↓
売上
↓
人件費・経費
↓
利益
↓
事業所の継続
という一つの仕組みとして考えることが重要です。
令和9年度報酬改定は、単なる「報酬単価の変更」ではありません。
現在のB型事業所が、今後も安定してサービスを提供し続けられる体制になっているのかを見直す機会と考えることができます。
今後、厚生労働省から具体的な改定内容が示された段階では、基本報酬、加算、工賃、利用時間、人員配置等について、さらに具体的な対応が必要になります。
そのときに慌てないためにも、まずは現在の事業所の「数字」と「運営体制」を整理しておきましょう。
参考資料
厚生労働省「令和9年度障害福祉報酬改定に向けた主な論点」等。
本記事は2026年9月時点で公表されている情報をもとに作成しています。令和9年度障害福祉サービス等報酬改定の内容は今後変更される可能性があります。具体的な報酬単価、算定要件等については、今後発出される告示・通知・Q&A等をご確認ください。
