令和9年度障害福祉サービス等報酬改定で何が変わる?
既存事業所が今から準備すべきことを行政書士が解説
「令和9年度の障害福祉報酬改定では何が変わるのか」
「今の事業所は、何を準備しておけばいいのか」
「基本報酬や加算はどうなるのか」
障害福祉サービスを運営している事業者の方にとって、令和9年度障害福祉サービス等報酬改定は、今後の事業経営を左右する重要なテーマです。
ただし、最初に注意しておきたいことがあります。
- 令和9年度報酬改定は、2026年9月19日現在、まだ最終決定されていません。
- 現在、厚生労働省の検討チーム等で具体的な論点が議論されています。
- 現時点では「決定事項」ではなく「検討されている方向性」を把握することが重要です。
- 事業所は、報酬単価だけではなく、人員配置、加算、利用状況、支援記録、運営体制、収支まで確認しておく必要があります。
厚生労働省は、令和9年度障害福祉報酬改定について、2026年4月から検討を開始しています。2026年9月17日に開催された社会保障審議会障害者部会では、「令和9年度障害福祉報酬改定の議論の状況について」が資料として示されています。
現時点では、持続可能なサービス提供体制、サービスの質の確保・向上、地域生活への支援、人材確保、生産性向上、地域差や人口減少への対応などが主な論点として整理されています。※1
この記事では、現時点で公表されている情報をもとに、令和9年度報酬改定を障害福祉事業所の経営・運営という視点から整理します。
令和9年度障害福祉サービス等報酬改定とは?
- 令和9年度の障害福祉サービス等報酬を見直すための検討が進められています。
- 2026年9月現在、具体的な報酬単価などは確定していません。
- 現在は各サービスの報酬や基準の在り方について議論が進められています。
障害福祉サービス等報酬改定とは、障害福祉サービスを提供した事業者に支払われる報酬の仕組みを見直すものです。
基本報酬だけではなく、各種加算、算定要件、人員配置、サービスの評価方法など、事業所の運営に関係する幅広い事項が対象になります。
今回の令和9年度改定については、厚生労働省の「障害福祉サービス等報酬改定検討チーム」において検討が進められています。
2026年8月27日の第62回検討チームでは、「令和9年度障害福祉報酬改定に向けた主な論点(案)」が示されました。※2
その後、2026年9月17日の社会保障審議会障害者部会でも議論状況が報告されています。
つまり、現時点では「令和9年度はこの報酬になる」と断定する段階ではありません。
一方で、今後どのような方向で制度が見直される可能性があるのかを把握することは、事業所経営にとって重要です。
令和9年度報酬改定で現在示されている4つの大きな論点
- 持続可能なサービス提供体制の確保
- 希望する地域等での生活の支援や多様なニーズへの対応
- サービスの質の確保・向上と制度の持続可能性の確保
- 地域差や人口減少への対応等
ここからは、それぞれを事業所経営の視点から見ていきます。
1.持続可能なサービス提供体制の確保
現在の議論では、物価高騰、賃金上昇、人材確保、事業所の経営状況などが重要なテーマとして挙げられています。
また、人材確保とあわせて、介護テクノロジーの活用など、生産性向上に関する取組についても検討事項とされています。※3
これは、障害福祉事業所にとって非常に重要なポイントです。
なぜなら、事業所の収入だけを見ていても、実際の利益は判断できないからです。
| 項目 | 確認するポイント |
|---|---|
| 売上 | 基本報酬・加算・その他収入 |
| 人件費 | 職員数・給与・社会保険・採用費 |
| 利用状況 | 利用者数・稼働率・利用時間 |
| 運営コスト | 家賃・車両・光熱費・システム等 |
報酬改定後に売上が増えたとしても、それ以上に人件費や運営コストが増えれば、利益が増えるとは限りません。
したがって、令和9年度改定への対応では、「報酬がいくらになるか」だけではなく、「その報酬体系で事業所を継続できるか」という視点が必要になります。
2.地域生活への支援と多様なニーズへの対応
現在の論点では、障害者が希望する地域で生活できるようにするための支援や、地域移行、地域生活の継続、相談支援、意思決定支援などについても検討されています。※4
さらに、強度行動障害、医療的ケア、高次脳機能障害、重症心身障害など、多様な障害特性に応じた支援体制についても論点として挙げられています。
この方向性を考えると、事業所には単に「利用者を受け入れる」だけではなく、どのような支援を提供し、その支援をどのように評価・記録しているのかがより重要になる可能性があります。
3.サービスの質の確保・向上と制度の持続可能性
今回の改定を考える上で、特に注目しておきたいのが「サービスの質」です
厚生労働省が示した論点では、事業者の質の確保について、運営基準、報酬の算定要件、管理者等の要件、研修などが検討事項として挙げられています。※5
また、虐待防止措置、情報公表制度、業務継続計画、カスタマーハラスメント対策など、事業者に求められる対応についても検討対象とされています。
ここで重要なのは、報酬と運営指導を別々に考えないことです。
報酬改定
↓
算定要件・運営基準
↓
人員配置・支援体制
↓
記録・マニュアル・研修
↓
運営指導・指定更新
↓
事業所の継続性
この一連の流れを理解しておくことが重要です。
4.地域差や人口減少への対応
厚生労働省の資料では、地域区分、国庫負担基準、中山間地域・人口減少地域におけるサービス提供体制の維持・確保なども検討事項として挙げられています。※6
特に地方では、利用者だけでなく、職員の確保も難しくなる可能性があります。
そのため、今後は「定員を増やせば売上が増える」という単純な事業計画ではなく、地域の人口、利用者ニーズ、職員確保、事業所間の競合などを含めて事業計画を考える必要があります。
令和9年度報酬改定で「基本報酬」はどうなる?
報酬改定というと、多くの事業者が最初に確認するのが基本報酬です。
しかし、現時点で具体的な単位数が確定していない以上、「上がる」「下がる」と断定することはできません。
むしろ今確認しておきたいのは、現在の事業所が基本報酬だけに依存した経営になっていないかという点です。
例えば、次のような数字を毎月確認しておくと、改定後のシミュレーションがしやすくなります。
- 定員
- 実利用者数
- 稼働率
- 平均利用日数
- 平均利用時間
- 基本報酬による収入
- 加算による収入
- 人件費
- その他固定費
- 営業利益
加算は「取れるか」ではなく「継続できるか」を見る
障害福祉事業所では、加算の取得が収益に大きく影響する場合があります。
しかし、加算は「届出を出せば終わり」ではありません。
算定要件を満たすためには、人員配置、支援内容、研修、記録、会議、計画書などが必要になる場合があります。
そこで、事業所ごとに次のような一覧を作っておくことをおすすめします。
| 加算 | 現在取得 | 算定根拠 | 継続可能性 |
|---|---|---|---|
| 加算A | ○ | 確認 | 確認 |
| 加算B | ○ | 確認 | 確認 |
| 未取得加算 | - | 取得可能性 | 体制確認 |
就労継続支援B型は「報酬」だけでなく工賃・稼働率を見る
就労継続支援B型を運営している事業所では、令和9年度改定を考える際に、基本報酬だけを見るのはおすすめできません。
B型では、利用者の利用状況、生産活動、工賃、支援内容、人員配置、加算など、複数の要素が事業所の収益と運営に関係します。
そのため、次のような経営指標を毎月確認しておくことが重要です。
| 経営指標 | 確認内容 |
|---|---|
| 定員 | 定員に対する利用状況 |
| 稼働率 | 実利用者数・利用日数 |
| 工賃 | 平均工賃・工賃向上の取組 |
| 生産活動 | 売上・原価・利益 |
| 加算 | 取得状況・算定根拠 |
| 人件費 | 職員配置と給与総額 |
令和9年度改定に備えるということは、単に「新しい単位数を確認する」ことではありません。
現在の事業所の収益構造を把握し、改定後にどこが変わると経営に影響するのかを把握することが重要です。
共同生活援助・グループホームも「人員配置」と「支援の質」を確認
共同生活援助についても、令和9年度改定を考える際には、報酬だけでなく支援体制を確認することが重要です。
特に、利用者の障害特性や支援ニーズに応じた支援体制、職員配置、夜間を含めた支援体制、記録などは、事業所運営と密接に関係します。
現在の検討事項では、障害者の地域生活の継続や、多様なニーズへの対応、サービスの質の確保などが重要な論点として挙げられています。※7
そのため、グループホームについても「何人入居させればよいか」だけではなく、どのような支援を、どのような体制で継続して提供するのかという視点が必要です。
放課後等デイサービスなど障害児支援も確認が必要
令和9年度改定では、障害児支援についても質の向上やサービスの充実が論点となっています。
厚生労働省の資料では、人材育成、チーム支援、支援体制の評価、医療的ケア児・重症心身障害児への支援、インクルージョン、地域連携、家族支援などが検討事項として挙げられています。※8
放課後等デイサービスなどを運営している事業者は、現在の支援内容を一度整理しておくとよいでしょう。
- 個別支援計画に沿った支援になっているか
- 支援内容が記録されているか
- 職員間で支援方針を共有しているか
- 家族との連携が適切に行われているか
- 学校や関係機関との連携体制があるか
- 職員研修が実施されているか
令和9年度報酬改定と運営指導はどう関係する?
運営体制・人員配置・支援内容・記録・マニュアル・研修など、事業所全体の仕組みを確認する機会として考えることが重要です。
令和9年度改定の論点では、サービスの質の確保、運営基準、報酬算定要件、管理者等の要件、研修などが挙げられています。
つまり、今後の改定を考えるときには、報酬だけを見るのではなく、事業所の「運営の再現性」を確認する必要があります。
例えば、ある加算を取得している場合でも、
- 誰が担当しているのか
- どのような手順で実施しているのか
- どの記録を残しているのか
- 職員間で共有されているのか
- 算定要件を満たしていることを説明できるのか
まで確認しておく必要があります。
これは、報酬改定への対応であると同時に、運営指導や指定更新に備えるための基礎にもなります。
令和9年度報酬改定に向けて今から確認したい10項目
まだ改定内容が確定していない今だからこそ、事業所側でできる準備があります。
| 項目 | 確認する内容 |
|---|---|
| ①基本報酬 | 現在の売上構成を確認 |
| ②加算 | 取得状況・算定根拠を確認 |
| ③利用者 | 利用人数・利用日数・利用時間を確認 |
| ④稼働率 | 定員に対する実利用状況を確認 |
| ⑤人員配置 | 現在の配置と必要人員を確認 |
| ⑥人件費 | 給与・社会保険等を確認 |
| ⑦記録 | 支援記録・会議記録等を確認 |
| ⑧個別支援計画 | アセスメントからモニタリングまで確認 |
| ⑨規程・マニュアル | 実際の運用と一致しているか確認 |
| ⑩収支 | 月次利益と改定後のシミュレーション |
報酬改定前に「事業所の現在地」を把握する
令和9年度報酬改定に備えるうえで、私が特におすすめしたいのは、現在の事業所を一度「見える化」することです。
例えば、次のようなシートを作ります。
- 定員:__人
- 平均利用者数:__人
- 稼働率:__%
- 月間売上:__円
- 基本報酬:__円
- 加算収入:__円
- 人件費:__円
- その他固定費:__円
- 営業利益:__円
- 取得中の加算:__
- 未取得の加算:__
- 人員配置上の課題:__
- 記録上の課題:__
- 運営指導上の課題:__
この表を作っておけば、今後、令和9年度の具体的な報酬単価や算定要件が示されたときに、自社への影響を比較的スムーズに確認できます。
「報酬改定=売上アップ」と考えないことが重要
報酬改定のニュースを見ると、どうしても「報酬が上がるのか、下がるのか」という点に目が向きます。
しかし、事業所経営で重要なのは、最終的な利益です。
報酬
+
加算
+
その他収入
-
人件費
-
家賃・車両・光熱費等
-
その他経費
=
最終的な利益
例えば、報酬上の評価が変わったことで必要な職員配置が変われば、人件費が変わる可能性があります。
新しい加算を取得できたとしても、そのために必要な人員、研修、記録、管理コストが増える可能性があります。
そのため、今後の改定内容が明らかになった段階では、「売上がいくら変わるか」ではなく「利益がいくら変わるか」までシミュレーションすることが重要です。
令和9年度報酬改定に向けた事業所チェックリスト
□ 現在の月間売上を把握している
□ 基本報酬と加算収入を分けて把握している
□ 利用者数・稼働率を毎月確認している
□ 利用時間を把握している
□ 人件費率を把握している
□ 現在取得している加算を一覧化している
□ 各加算の算定根拠を確認できる
□ 個別支援計画と実際の支援内容が一致している
□ 支援記録を適切に残している
□ アセスメント・モニタリングを適切に実施している
□ 職員研修を実施している
□ 会議・ケース会議の記録を残している
□ 規程・マニュアルと実際の運用が一致している
□ 虐待防止等の必要な体制を確認している
□ 業務継続計画(BCP)等の必要な体制を確認している
□ 運営指導を想定して資料を整理している
□ 月次の収支を確認している
□ 報酬改定後の収支シミュレーションができる状態になっている
行政書士に相談するなら「報酬だけ」ではなく事業所全体を見る
令和9年度報酬改定について相談するとき、単に「この加算は取れますか?」という質問だけで終わらせるのはもったいありません。
本当に確認したいのは、
- 現在の指定状況
- 人員配置
- 加算の取得状況
- 運営規程
- 各種マニュアル
- 個別支援計画
- 支援記録
- 職員研修
- 会議記録
- 運営指導への備え
- 指定更新への備え
- 改定後の収支構造
などをまとめて確認することです。
障害福祉事業は、報酬だけで成立しているものではありません。
「指定を受ける」→「適切に運営する」→「報酬を算定する」→「記録を残す」→「運営指導に対応する」→「指定を継続する」
という一連の仕組みで成り立っています。
行政書士犬飼和昭事務所が考える令和9年度改定への備え
令和9年度報酬改定について、現時点で「この報酬になる」と断定することはできません。
しかし、改定内容が確定してから準備を始めるのではなく、今のうちから事業所の状態を確認しておくことはできます。
当事務所では、障害福祉事業所について、指定申請だけを単独で考えるのではなく、
- 指定申請
- 指定更新
- 加算
- 運営体制
- 実地・運営指導への対応
- 返戻リスク
- 事業所の継続的な運営
までを一つの流れとして考えることが重要だと考えています。
令和9年度報酬改定も同じです。
「報酬がどう変わるか」だけを見るのではなく、「自分の事業所の運営が、その変化に対応できる状態になっているか」を確認することが重要です。
令和9年度報酬改定について事業所の現状を確認したい方へ
「現在取得している加算を確認したい」
「運営体制に問題がないか確認したい」
「運営指導に備えておきたい」
「改定後の事業所経営が心配」
このような場合は、報酬改定の情報だけを見るのではなく、現在の事業所の人員配置・加算・記録・運営体制・収支を一度整理しておくことをおすすめします。
行政書士犬飼和昭事務所では、愛知県・名古屋市を中心に、障害福祉事業所の指定申請、運営体制、指定更新、運営指導等に関するご相談に対応しています。
令和9年度報酬改定についても、今後公表される制度情報を確認しながら、事業所の運営にどのような影響が考えられるのかを整理していきます。
まとめ|令和9年度報酬改定は「今の事業所」を見直す機会
令和9年度障害福祉サービス等報酬改定については、2026年9月現在、まだ検討段階です。
そのため、現時点で具体的な報酬単価について断定することはできません。
一方、厚生労働省では、持続可能なサービス提供体制、人材確保、生産性向上、地域生活への支援、多様なニーズへの対応、サービスの質の確保・向上、制度の持続可能性、地域差や人口減少への対応などが論点として示されています。※9
事業所側が今から取り組むべきことは、単に「報酬改定のニュースを待つ」ことではありません。
現在の事業所が、どのような収益構造になっているのか。
どの加算を取得しているのか。
その算定根拠を説明できるのか。
人員配置は適切なのか。
支援内容と記録は一致しているのか。
運営指導を受けても説明できる体制になっているのか。
こうした点を一つずつ確認しておくことが、令和9年度改定への現実的な備えになります。
報酬改定は「報酬単価の変更」だけではありません。
事業所の運営そのものを見直すタイミングとして捉えることが重要です。
今後、令和9年度報酬改定の具体的な内容が公表されるにつれて、当事務所でも、基本報酬、加算、人員配置、サービス別の影響、既存事業所の対応方法などを順次整理していきます。
【参考資料】
※1~※9:厚生労働省「令和9年度障害福祉報酬改定の議論の状況について」「令和9年度障害福祉報酬改定に向けた主な論点」等を参照。
本記事は2026年9月19日時点で公表されている情報をもとに作成しています。令和9年度障害福祉サービス等報酬改定の内容は今後変更される可能性があります。具体的な報酬単価、算定要件等については、今後発出される告示・通知・Q&A等をご確認ください。
